私は2015年6月〜2020年6月まで香港に住み、客室乗務員として働いていました。
さて、香港にとって2019〜2020年は激動の1年でした。
その大きな理由は「政府と市民の対立・デモ活動」です。
・空港を占拠したデモ集会が開かれ、一時的に全ての航空便がストップ
・地下鉄駅の破壊・道路占拠によって生じる交通の乱れ
・観光客(主に中国本土の人)の激減
など、デモは個人の生活・経済活動の両方に大きな影響を与えました。
でも正直日本で暮らしていると、疑問に思いませんか?
・そもそもなんでデモしてるの?
・実際街の人はどんな感じなの?
・自分たちは何を考えればいいの?
今回はこれらについて、なるべくわかりやすくお話できたらと思っています。
香港ってどんなところ?
香港は、約150年間イギリスの植民地でした。
細かくいうと、香港は3回に分けてイギリスの領地になっています。
1回目は1842年に香港島が永久イギリス領に
2回目は九龍半島の南側が永久イギリス領に
最後に1898年、九龍半島北側とその他エリアが99年間イギリス領に
「99年貸して!」は、ほとんど
「そのままもらうからね!よろしく!」
と同義です。イギリスはもともと返すつもりはありませんでした。
しかし「返還」の時期が近づく中、
・まだ「植民地支配」っていう戦前の価値観でいくの?という国際的な視線
・中国からの圧力
これらによってイギリスは、香港の扱いを真剣に考えさせられます。
結果的に1997年7月1日、香港の全ての領土は中国に返還されました。
一国二制度ってなに?
返還が決まった前後の、中国と香港の考えはこうでした。

貿易も金融も強いし、香港いけてるよね。欲しい!

え!中国になるなら、カナダやイギリスに移住するわ・・・
中国の社会主義・言論や思想の自由がないことを恐れる多くの香港人は、国外に移住してしまいます。

分かった、制度は譲歩するから。ある程度このままでいいから!出て行かないで!
こうやって始まったのが50年間の一国二制度です。
一国二制度はこんな感じです↓
今まで通り、自由経済・資本主義でOK(中国は社会主義)
言論・表現の自由そのままでOK(中国で共産党の批判をすると捕まります)
独自の通貨・法律・パスポートを使用してOK
150年もの間、香港はイギリスの領地として歩んできました。
急に「これから中国です!」といわれても、国民は混乱しますね。
中国側は移行期間として、この50年間の一国二制度を設けました。
このため、香港の正式名称は
中華人民共和国・香港特別行政区🇭🇰
です。
またここで重要なのは、普通選挙(住民の直接投票)がないことです。
このタイミングで中国側の姿勢はこんな感じでした。

選挙はするけど、中国側で決めたメンバーだけが投票できるよ。普通選挙はそのうち導入するよ!ちょっと待っててね〜
一般市民には投票権がありません。投票できるのは市民代表の「選挙委員」で、その過半数が親共産党・親中国のメンバーです。
デモのきっかけ
近年デモや騒動は何度か起こっています。
2012年:国民教育の導入に反対する学生デモ
政府は、中国への愛国心を養うカリキュラムを、香港の学校に導入しようとしました。
「洗脳教育はやめろー!」と抗議し、た学生たちのデモです。
2014〜2015年:普通選挙の要求デモ
前章でお話した「住民による直接投票」を求めるデモです。
2015年後半:書店員の失踪事件
共産党を批判するような書籍。中国では許されませんが、香港では言論の自由が認められているはずです。
そんな書籍を取り扱ってる書店の関係者らが、5人失踪しました。
後から、中国に拉致されていたことが明らかになりました。
そして、2019年の大規模デモです。
こちらの直接的な原因は「逃亡犯条例の改正案について」です。
逃亡犯条例ってなんのこと?
台湾で、香港人が恋人を殺害し香港に逃亡した事件が起きました。
他国で起きた殺人事件なので、一般的には台湾に身柄を引き渡して、その国の法律で裁かれます。
ですが香港と台湾の間には、犯罪者の引き渡し協定が作られていませんでした。
香港政府は

と提案。
しかし、これを導入してしまうと
香港内で中国の政治批判をした人が、何かと理由をつけられ中国に連行される、そんなことが起こる可能性が出てきます。
ただでさえ、
洗脳教育の導入
完全な普通選挙の導入拒否
言論統制と思えるような、謎の失踪事件
と続いていたのです。
しかも、一国二制度はまだ30年以上続く約束なのに・・・。
この法案が通ったら香港は終わる・・・
そういった危機感を持って、香港人たちは必死に活動をはじめました。
警察や政府の反応は?
デモ隊・デモ活動に対しての反応は、大体こんな感じでした。
警察:強く押さえ込む。暴力沙汰になることも。(デモ隊の一部も暴力的でした)
政府:批判し、方針は変えない。(親中国だから当然)
企業:経済活動を守る為、中国に従わざるを得ない・・・
市民:サポートしたいけど、経済が回らない!それに政府から目をつけられるのが怖いよ・・・
(この辺りは次回の記事で詳しく書きます)
政府・警察側は親中国なので絶対に姿勢は崩しません。
市民側も、ラストチャンスだと考えているので諦めません。
それが今回のデモが大きくなり、長期化した原因だと考えられます。
参考にした資料
✔️池上彰の世界の見方 中国・香港・台湾編 (池上彰著 小学館)
これは非常に分かりやすかったので、中国近辺の問題や歴史に興味がある方には強く強くオススメします!
中国・香港・台湾の歴史や、それぞれの政策、現在の問題がなぜ起こっているのか?などが本当にクリアになります。
✔️ジョシュア 大国に抗った少年 (NETFLIX)
1時間ほどのドキュメンタリー映画です。壮絶です。政治的な問題抜きにしても、若い人が信念を持ってパワフルに活動している姿に、頭が下がります。
✔️中田敦彦のYOUTUBE大学
実は最初はこれから入りました。池上彰さんの本を分かりやすく解説してくれています。少し長いですが、理解が深まりますよ!
さいごに
この記事を書いている今日は、7月1日。香港特別行政区成立記念日、つまり返還の日です。
自分なりに香港に思いを馳せてみようと、またできる限り間違った情報を記載しないようにと注意しながら書きました。
みなさまの参考になったら幸いです😊
コメント
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